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検査技師の窓口
業界のこと

臨床検査技師の将来性はない!
半分だけね

けいた公開 更新

「臨床検査技師は、そのうちなくなる仕事だよ」みたいな話、聞いたことありませんか?

僕が学生のころから、ずっと言われています。ただ、だいたいは「機械が全部やるようになるから」くらいのふんわりした話で、数字を見たことがなかったんですよね。

ちゃんとした推計が出ていたので、読んでみました。思っていたのと、ちょっと違いました。

減るのは「数えられている検査」だけ。推計を読んでみました。

みき

検査室の機械もどんどん新しくなるし、このまま自分の仕事がなくなるんじゃないかって、たまに不安になります。

けいた

その話、僕が学生のころからずっと言われてますね。実際どうなのか、数字を見ていきましょう。

この記事でわかること

  • 検査の件数は2027年をピークに減っていく
  • 免許を持つ人は2053年まで増えて、そこで一定になる
  • ただし超音波検査も1件は1件。手間の重さは数えられていない
  • 件数で数えられない仕事(報告書・医師への説明)は、そもそも入っていない
  • タスクシフトで、やれることはむしろ増えている(静脈路の確保、造影剤の注入など)
  • 辞める人が減っているので、空くポストも減っている
  • AIの承認は病理・血液像・尿沈渣で0件。ただし職能団体は「役割は測定から品質管理へ」と書いている

件数は2027年がピーク

医療職ごとに「これからどうなるか」を推計した報告書があります。レセプトのデータから検査の件数を数えて、人口の見通しと掛け合わせたものです。

レセプトというのは、病院が健康保険に出す請求書のことです。どの検査を何件やったかが、ここに全部残ります。だから、実際に行われた検査の数を数えるのに使えるわけです。

そこに、臨床検査技師のことがはっきり書いてありました。関連する検査の件数は、2027年をピークに減っていくそうです。

令和3年度 厚生労働行政推進調査事業費補助金(地域医療基盤開発推進研究事業)「医療関係職種の実働人数把握のための推計式構築について〜医療機関における需給推計〜」

元データ

2027年って、もうすぐですよね。

人は2053年まで増える

同じ報告書に、免許を持つ人の数の推計も載っています。こちらは2053年まで増えて、そこで一定になると書かれていました。

つまり、検査の件数は2027年から減りはじめるのに、人のほうはその後20年以上増え続けるということです。

みき

えっ、仕事が減るのに人は増えるんですか?

けいた

推計のうえでは、そうなります。ただ、これで終わりの話ではないんです。

超音波検査も、1件は1件

みき

さっきの推計、エコーも入っているんですよね?

けいた

入っています。巻末の一覧に、心エコーも経食道も負荷も、超音波検査の項目がひととおり並んでいました。

ただ、数え方に引っかかるところがありました。

レセプトの件数を数えているので、時間のかかる心エコーも、すぐ終わる検査も、同じ1件です。報告書の考察には、こう書かれています。

診療放射線技師以外の職種については、業務の事情から重みづけ係数を抽出することに時間がかかり、本年度内に推計を行うことができなかった

診療放射線技師のほうは、検査の種類ごとに手間の重みをつけて、件数を業務量に直しています。臨床検査技師のほうは、そこまでできていません。件数は数えたけれど、その1件がどれだけ重いかは、まだ数えられていないということです。

もうひとつ。レセプトの件数は、誰がやったかを区別していません。エコーは臨床検査技師もやるし、医師もやります。だから「臨床検査技師の関連検査」として数えられた超音波検査の件数には、医師が撮った分も入っていることになります。

減っていくと書かれているのは、あくまで件数の話です。手間の重さも、誰の手でやっているかも、まだ数えられていません。

タスクシフトで増えた

もうひとつ、この推計に入っていないものがあります。タスクシフトで移ってきた仕事です。

タスクシフトというのは、医師がやってきた業務を他の職種に移していく動きのことです。医師の働き方改革にあわせて進んでいて、2020年には「特に推進する44業務」というものが出されました。同じ報告書にも、その話が前提として書かれています。

ここで一度、臨床検査技師の法律を見てみてください。第20条の2に、こういう見出しが付いています。

保健師助産師看護師法との関係

診療の補助というのは、本来は看護師でないとできない行為です。その例外として、臨床検査技師も採血や検体採取、生理学的検査ができる、という作りになっています。

臨床検査技師等に関する法律 第20条の2(e-Gov法令検索)

元データ

つまり、やれることが増えるというのは、看護師さんがやってきた領域に入っていくということでもあるんですよね。2015年には、鼻や喉をぬぐう検体採取などもできるようになりました。

みき

言われてみれば、コロナのときも検査技師が採取していましたね。

けいた

あれも、法律が変わっていたからできたことなんです。僕も当時、めちゃくちゃ検体採取やりました。

令和3年の法改正で、できることがさらに広がりました。

採血のときに静脈路を確保して、そこに点滴装置をつなぐ(電解質輸液に限ります)。血液成分採血装置をつないで操作して、終わったら抜針と止血までやる。超音波検査のために造影剤注入装置をつないで、造影剤を入れる

このあたりは、まさに看護師さんがやってきた行為ですよね。

検査のほうでも、運動誘発電位検査、体性感覚誘発電位検査、持続皮下グルコース検査、直腸肛門機能検査が追加されました。喀痰の吸引や、内視鏡の生検鉗子を使った組織の採取もできるようになっています。

日本臨床衛生検査技師会「法改正により追加される業務について」(臨床検査技師等に関する法律施行令第8条の2、施行規則第1条の2、同第10条の2)

元データ

注意

これらをやるには研修が必要です。令和6年4月1日より前に免許を受けた人は、厚生労働大臣が指定する研修(日本臨床衛生検査技師会が実施)を受けてからでないとできません。

そしてここで、推計のやり方を思い出してください。レセプトに出てくる検査の件数を数えて計算しています。ということは、件数として数えられない仕事は、最初から入っていないということになります。

検査結果に添える報告書も、医師への説明も、精度管理も、件数にはなりません。でも実際にはやっていますし、これからもっと増えていくはずです。

けいた

減るのは「数えられている検査」で、増えているのは「数えられていない仕事」なんですよね。ここを分けて考えないと、話がごちゃごちゃになります。

ただ、現場での受け止めはもう少し冷めています。

椅子が減っている

推計の話をしてきましたが、いまの求人はどうなのか。気になるのは、椅子そのものが減っているかどうかです。

これは新卒だけの話ではないと思っています。辞める人が減れば、そのぶん空くポストも減るからです。転職しようとしたときに、行き先そのものが少ないということになります。

みき

転職したくても、募集が出てないと動けないですもんね。

けいた

そうなんです。辞めたくなってから探しはじめると、選べるほど出ていない、ということが起きます。

AIに仕事を取られるのか

「そのうちAIがやる」という話も、セットでよく出てきます。

そこで、実際に承認されているAIを数えてみました。

AIの承認を数えた

医療機器として承認されたプログラムは187品目。そのうちAIを使っているものが65件です(2026年3月末)。領域ごとに分けると、こうなりました。

承認されたAI医療機器の内訳(2026年3月末)
領域件数
放射線画像17件
内視鏡16件
超音波検査4件
心電図・脈波3件以上
眼底1件
微生物1件
病理・細胞診・血液像・尿沈渣0件

医薬品医療機器総合機構(PMDA)「プログラム医療機器の製造販売承認品目一覧」から集計。

元データ

顕微鏡を覗く仕事、つまり病理も細胞診も血液像も尿沈渣も、承認されたAIは0件でした。

みき

意外と来てないんですね!

けいた

ここは注意が要ります。この一覧、プログラム単体で承認されたものしか載っていないんです。

一覧にはこう書かれています。「有体物の医療機器として承認された品目の構成品にアプリやプログラムが含まれる場合、本一覧には含まれていません」。

つまり分析装置に組み込まれたAIは、ここに出てこないということです。0件だからそういう機能がない、という意味ではありません。

ちなみに検査の分野で唯一あるのが、尿の培養から菌種を推定するソフトでした(2024年11月承認)。心電図のほうも2024年末から続けて承認が出ています。

国はどう見ているか

厚生労働省が、AIを重点的に進める領域を6つ挙げています。ゲノム医療、画像診断支援、診断・治療支援、医薬品開発、介護・認知症、手術支援。

この報告書のなかに、「臨床検査」という言葉は1回も出てきません

結論のところには、こう書かれていました。

AIによる予測をそのまま受け入れるのではなく、AIによる予測を含めた各種の状況を踏まえて人間が最終判断を下す必要性は、引き続き残るはずである

厚生労働省「保健医療分野におけるAI活用推進懇談会 報告書」(平成29年6月)

元データ

日臨技は何と言うか

職能団体である日本臨床衛生検査技師会も、提言でこう書いています。

AIはあくまで「道具」であり「道具」には必ず「使う人」が必要となる。つまりAIは我々にとって仕事を奪う「脅威」ではなく、人間と「共存」していく存在となっていくと予想する

ここまでなら「安心していい」と読めます。ただ、同じ団体が2026年にはこうも書いているんです。

臨床検査においては、将来的には自動化・ロボティクス化によって無人に近い状況になると言われています

検査業務ではオートメーション化が進み、臨床検査技師の役割は測定からデータの品質管理へと変化しています

日本臨床衛生検査技師会「将来へ向けての臨床検査技師のあり方」提言(平成31年3月)、および JAMTマガジン 2026年1月号

元データ

仕事がなくなるとは言っていません。ただ、中身が変わるとは言っています。 測る人から、データを見る人へ。ここは正面から受け止めたほうがいいと思います。

いまの求人はどうか

将来の推計とは別に、いまの数字も見ておきます。

臨床検査技師の有効求人倍率は1.5倍(令和7年度)でした。求職者1人に対して、1.5件の求人があるということです。

求人に書かれている賃金は、月24万円から26万円のあいだで動いています。

厚生労働省 職業情報提供サイト(job tag)「臨床検査技師」令和7年度

元データ

じゃあどうするか

件数が減って人が増えるなら、何もしなければ取り分は薄くなります。ただ、ここまで見てきたとおり、推計に入っていない仕事のほうはむしろ増えています。

  1. STEP1増えた業務を、実際にやる差がつくのは、実際に静脈路を確保したり造影剤を扱ったりしているかどうかだと思います。担当が回ってきたときに、断らないことです。
  2. STEP2検体検査なら、報告書と説明を武器にする測って終わりにしないことです。結果に何を書き添えるか、医師に聞かれたときにどう答えるか。ここを追いかけていくと、職場での立ち位置が変わってきます。
  3. STEP3エコーができる場所を探す検体検査とは必要な力が違いますし、求人の数も多いです。造影剤を扱えるようになったので、やれることも広がっています。
  4. STEP4「この人に任せるしかない」仕事を持つシステムでも、精度管理でも、新しい機器の立ち上げでも。手を挙げた人のところに残ります。

だから「将来性がない」は、半分だけ当たっています。数えられている検査の話としては正しくて、それ以外の話としては外れている、という感じです。

「将来性がない」と言われたときに、僕はいつも「どの検査の話ですか」と聞き返したくなります。全部ひとまとめにすると、判断を間違えると思うんですよね。

半分だけ当たっています

  • 検査の件数は2027年がピーク。そこから減っていく推計
  • 免許を持つ人は2053年まで増えて、そこで一定になる
  • 超音波検査も件数には入っている。ただし1件の重さと、誰がやったかは数えられていない
  • いまの有効求人倍率は1.5倍(令和7年度)
  • タスクシフトで、やれる行為はむしろ増えている(令和3年に静脈路の確保や造影剤の注入が追加)
  • 移ってきた仕事は件数に出てこないので、推計には入らない
  • AIの承認は放射線画像と内視鏡に集中。顕微鏡を覗く領域は0件
  • ただし日臨技自身が「役割は測定からデータの品質管理へ」と書いている
  • 数えられていない仕事をどれだけ持っているかで、話が変わる

よくある質問

Q臨床検査技師は、なくなる仕事ですか?

この推計で減るとされているのは検査の件数であって、仕事そのものが消えるという話ではありません。ただ、件数が減って人が増えるなら、1人あたりの取り分は薄くなります。そこは正直に見ておいたほうがいいと思います。

Q超音波検査は推計に入っていますか?

入っています。巻末の「需要推計で使用した診療行為コード一覧(臨床検査技師)」に、心エコーを含む超音波検査の項目が並んでいます。ただし誰が実施したかは区別されておらず、1件あたりの手間の重みづけも「本年度内に行うことができなかった」と考察に書かれています。

Qこの推計はいつのものですか?

令和3年度(2021年度)に出た、厚生労働行政推進調査事業費補助金の研究報告です。推計なので、前提が変われば結果も変わります。

けいた

ここまで読んでくれてありがとうございます。最後に、あなたの場合はどうなのかを見ておきませんか。

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この記事を書いた人

けいた

臨床検査技師/30代・男

検体検査からはじめて、いまはエコー。心電図検定1級・心電図専門士・超音波検査士(循環器)を持っています。カテーテル室も救急も、ひととおりやってきました。医療従事者向けの心電図講座も運営しています。

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